吉祥祭は9月の中旬~下旬の土曜、日曜に開催される最も大きなイベントで、二日間で13000人近くの来客の方々が来校されます。この大きなイベントの主役はもちろん生徒たち。生徒会組織の1つである吉祥祭実行委員会(文化部リーダー会)が全体の枠組みやシステムを取りまとめ、裏方から各参加団体の発表を支えます。吉祥祭実行委員会は、その年ごとに「吉祥祭テーマ」を掲げ、吉祥祭に文化的統一感を与えます。また、生徒たち自身の叡智を総結集し、「さらによい吉祥祭」の実現のため、毎年様々な試みを行います。仲間との話し合い、先生たちへの説明を経て、参加団体側への説明、そしてそれが適正に実施、運営できるように奔走します。
参加団体には、部・クラブなどの参加団体のほかに、クラス、高校生の有志団体、課外授業などがあります。クラスの場合、中学1・2年生は展示ジャンルで、中学3年生はゲームまたは芸能ジャンルで、高校1・2年生はゲーム、喫茶、芸能のいずれかのジャンルで参加します。また、高校3年生の一部生徒は有志参加という形で最上級生のパワーを見せつけます。
生徒たちは、この吉祥祭での発表を成功させるため、何ヶ月も前から準備を始めます。その過程では、集団の中の様々な意見を1つにまとめあげていくことも求められます。役割分担しながら、さまざまな情報や状況を共有することも必要になります。時には仲間と衝突することもあります。しかし、試行錯誤しながら、リーダーシップとフォロワーシップを学びます。1つのものをつくりあげるために、自らの役割を考え、他者と協調し、実際に行動した経験は、彼女たちにとって将来の大きな財産になるはずです。

小さな変化 大きな一歩

 吉祥生全員が力を合わせて創る。大勢の人がそれを観に来る。有名人がステージで歌を歌うわけでもなければ、プールでアシカショーが開かれるわけでもない吉祥祭に、一万人を超える人が来ます。これは本当にすごいことだと思います。同時にこの事実は、吉祥祭が如何に大きなイベントであるかを指し示しています。私がこの一年の活動を通して学んだことのひとつは、“一度に何もかも変えることはできない”ということです。そんなことかと思われるかもしれませんが、これは私にとって、とても大きな発見でした。今の素晴らしい吉祥祭は、歴代の先輩たちの“小さな変化の積み重ね”であることがはっきりと解ったのですから。
 もちろん、新しく創りだしたものや、達成できたもの、達成はできなかったものの大きな一歩を踏み出せた企画や試みもたくさんありました。本当は、書き切れないほどありますが、当日の吉祥祭で来校者の方々に特別目についたであろうものをあげれば、パンフレットの二色刷り、グリーンコートステージの活性化、テーマを通しての吉祥祭全体の統一感などがあります。これら全て、吉祥祭の長い歴史の中では小さな変化に過ぎませんし、むしろ気付かなかった人も多いと思います。しかし、この小さな変化に誇りを持てるようになったことが、吉祥祭実行委員長という重い役職を通して私が学び得た一番の項目です。
 残念ながら二日目は雨となってしまいましたが、両日とも校内には溢れんばかりのパワーが満ちていたように思います。文化部が運営するインフォメーションデスクに「吉祥祭は毎年素晴らしいので遊びに来ています」という声が寄せられたときには、本当に感激しました。
(吉祥祭実行委員長・高校2年生)


期待を胸に、諦めずに話し合いを

 昨年2月、第75回リーダー会は発足しました。全員で「歴代最高の吉祥祭にしよう」と誓い、活動は始まりました。私はそれまでの2年間で、ぼんやりと理想の吉祥祭像を抱いていたものの、どうすれば歴代最高の吉祥祭を作ることができるのか全く分かりませんでした。しかしリーダー会メンバー27人で今年はどんな吉祥祭にしたいか、新しくどんな企画を行いたいか、という話し合いから活動を始めると、それは必然的にはっきりしていきました。なぜなら、この話し合いで今年はたくさんの斬新な企画が持ち上がったからです。私は従来の吉祥祭の良いところを生かしながらも新たな企画を多く取り入れ、そして来場者と吉祥生が一体となって盛り上がる吉祥祭を作り上げようと固く決意しました。
新たな企画を実施することは、多くの場合大きなシステム変更や沢山の人に対する影響が伴うため、簡単ではありません。実際、今年の新企画はどれもリーダー会のメンバー、特に高2にとって多くの仕事や工夫を要するものばかりでした。しかし、みな吉祥祭をより良いものにしたいと言う思いから絶対に妥協の姿勢を見せず、全員で一致団結して新企画の実現に一生懸命励みました。今年の高2リーダーたちは、自分たちでも不思議なほど吉祥祭に対して本当に熱い思いを持った人ばかりで、そしてまた後輩たちも、高2の無理な要求や企画にもきちんと応じ、最後までついてきてくれました。第75回リーダー会メンバーがこの27人だったからこそ、多くの新企画を伴う吉祥祭を成功させることができたのだと私は心からそう思います。
 さて、このように私たちが吉祥祭を歴代最高のものにするために全力で準備した新企画について、特に力を入れたものを取り上げるならば、なんといっても小劇場です。今までの舞台の数だと、雨天時にグリーンコートで発表ができなくなった場合、代わりとなる場所が十分にないことがまず始めの問題点でした。また、これに加えてクラスの芸能参加団体の数が少ないのではないかという意見もあり、この企画が持ち上がりました。しかしその企画は、従来のタイムテーブルや芸能参加団体のシステムの変更と多くの人に影響を与えます。そして何よりも、このような革新的な企画を実施するという事は、これから吉祥祭の歴史を変えるという重み、そしてこの初回に全てがかかっているというリスクを伴うものなのです。初めは無理なのではないかと思いましたが、一方で、もしできたらすごいな、という期待を胸にみなで諦めずに話し合いを進めました。芸能参加団体セクションの奮闘の結果、実現しようと決まったときは、この企画によって今までとは一味違う、最高の吉祥祭を作り上げることが本当にできるのではないかという高揚感でいっぱいでした。しかし決まったときのその喜び以上に、この企画については当日までどうなるかわからない懸念がたくさんありました。
私たちだけでなく、小劇場の参加団体や多くの人が不安を抱えて迎えた当日。ところがそんな私たちの心配は全く無用で、朝から教室はたくさんのお客さんで溢れかえり、入場規制がかかる団体もあるほどでした。何より、参加している団体がどこもとても楽しそうに講演を行っている様子を見た時は、みな感激で胸がいっぱいになりました。吉祥祭の従来の形を逸脱するこの企画に様々な不安を感じていましたが、やって良かったと心から思いました。
(吉祥祭実行委員長・高校2年生)